映画「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」感想文

 

今回のエントリーはタイトルの通り映画の感想がメインです。


4/3(金)公開『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』予告編/公式

2020年10月13日を以って改名するアイドルグループの約5年間の軌跡を追うドキュメンタリー映画です。

なお予め記載しておきますが本エントリーはド主観です。感想文なので。

それではご笑覧いただけますと幸いです。

 

 

[目次]

  1. 欅坂46とライブ
  2. 欅坂46平手友梨奈
  3. 欅坂46のSeed & Flower
  4. 終わりに

*1

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それでははじまりはじまり。 

欅坂46とライブ

この映画の魅力に一つは間違いなくライブシーンだ。映画館の設備で観る欅坂46のライブ映像は最高だった。グループにまつわる細かいヒストリーが分からなくても、これだけで観に行く価値が十分にあると思わせてくれる。

映画冒頭の「ガラスを割れ!」、舞台前の満身創痍な平手友梨奈はだいぶ気になったが、舞台に上がればなんのその。彼女はまるでオーケストラの指揮者のようだったし、その指揮を受けて躍動する欅坂46のパフォーマンスはスーパーだったし、オタク・ファンの熱気も最高潮だったし、帰ったらドームライブBlu-rayを見ようとその瞬間決意してしまった。

 

 

ちなみにライブBlu-rayとの大きな違いはメンバーのパフォーマンス中の声が拾われているかいないかである。個人的にはメンバーの叫びが聞こえるのは新鮮で、特にアンコールの「不協和音」で平手が「保乃ーーー!」と叫ぶシーンはすごく良かった。推しへのバイアスがあったとしても譲れないポイントである。

「ガラスを割れ!」のアリーナツアー2018の例の走り出すシーンの手前の「僕だって強くなりたい!」のくだりもなかなか印象的。相当曲に入り込んでるんだなと思った。けどまあさすがにあのあとのシーンを観てしまうとそれもなかなかに考えものだとは思う。なにせ人間がやっていることなので。。。

欅坂のパフォーマンスの集大成ではないかと感じたのが3rd Anniversary Liveの「黒い羊」。楽曲への深い深い理解が引き出したであろうメンバーのとてつもない表現力、楽曲の世界観は見ているものに恐ろしさを感じさせるまでだった。あれはパフォーマンスの枠を超えた何かだったと思う。極地へ到達したかのようなものを感じたし、現地で観たかったなと今更ながらに思った。なお3rd Anniversary Liveの「黒い羊」は欅坂46ラストアルバムのType-Aに付いてくる映像特典で観ることができるので、映画を見逃した方はぜひ観ていただきたい。必見のパフォーマンス、ぜひとも目に焼き付けてほしい。

 

そして「不協和音」。メンバー全員の鬼気迫るパフォーマンスは本当に圧巻で、この1曲にチケット代を払えるパフォーマンス。イントロがかかった時の怒号のような歓声もとても印象的で誰もが待ちに待った曲であり、パフォーマンス披露だった。映画の本題とずれるからであろうけど、もう少しバックステージでの推しにフォーカスして欲しかったというのはここだけの話。いやあ現地で観たかった。。。

小池美波と二人セゾン

この映画のテーマとしては「欅坂46平手友梨奈とは」だと思うが、裏テーマがあるとすればそれは小池美波と二人セゾンであり、平手不在時の二人セゾンのセンターへの挑戦だ。

小池美波の決意を語らずしてこの映画は語れない。欅のためなら、という美しい決意が欅坂を救ったのだと思うし、同時に2017アリーナツアーからのメンバーの成長を伝えるものでもあったと思う。どんなに勇気がいることだっただろう、本当に決意してくれてありがとうと伝えたい。そしてあんまり語られていないような気がしないでもないが、齋藤冬優花の歌唱もまた良かった。彼女もまた欅の屋台骨を背負っているメンバーであり、その貢献がもっと世間に知られてほしいと思う次第である。

 

 欅坂46平手友梨奈 

圧倒的な存在感ゆえに

さてさて前段楽でも述べたように映画の中心は欅坂46というよりは平手友梨奈その人である。と言っても本人のインタビューは無い。メンバーが語る平手友梨奈と過去の舞台裏映像のみ。それだけなんだけど物凄く人物像が掻き立てられる構成。

MV撮影のシーンとかライブでのパフォーマンスとか、改めて映像でこうやって見せられると、全くの素人の自分が見てもこの人は天才だと思ってしまう程の傑物。欅にとっては幸運でもあったけど、同時になかなか難しいことになったんだろうなというのが鑑賞終了後の感想。

一番印象的だったのは2ndシングル「世界には愛しかない」のMV撮影の場面。渡邉理佐が上手くいかないと涙をこぼす一方で、平手はその圧倒的な表現力で他のメンバーをノックアウトしたように見えた。平手の撮影を見るメンバーの目が『降参です』と言っているように見えて仕方がなかった。

その流れで見るとアリーナツアー2017の平手欠席に伴う一連の場面はとても理解できるように思う。自分より遥か高みにいる天才へ抵抗を続けるというのはとても難しい。ちょっとおこがましいけど、個人的に似たような経験もあるのでそう思う。

とはいえ、メンバーの発言を実際に聞くとそれはそれでショックだった。守屋は特にそういうイメージがなかったので余計にショック度合いは大きかった。理佐の発言もまた然りだけど。

 

平手自身もあまりに自分にばかり注目が集まるのも快く思わなかった結果、2017紅白の終わりにはメンバーへ脱退したい意思を伝えていた。「みんなは欅坂やってて楽しいですか?」というコメントのインパクトの強さ。もっともその本意がどれほどメンバーへその時点で伝わっていたかは微妙なところで、その後のメンバーインタビューを見るにあまりに平手に依存しすぎじゃない?と感じた。みんなで勝負すると言うのであれば、コアの部分もまた依り代とも言うべき人間に背負わすしかなかったというのはどうなのだろうか。

 

故事(?)になぞらえれば誰か平手のリュックを半分持ってくれる人がいれば良かった。実際には今泉佑唯がその役割を背負えるはずだったし、鈴本美愉にその気概があれば良かったと思う。なかった訳ではないと思う。だけど欅坂46はやっぱりこの3人がいてこそではなかったかな。残念なことに全員去ってしまったのがとてもとても悔やまれる。

余談ながら劇中TAKAHIRO氏が高橋監督に問い詰められるような感じになっていたが、他に問い詰めるべき人間がいるだろうと思う。TAKAHIRO氏はメンバーと対等に向き合ってパフォーマンスを引き出していたのだと思うので、劇中でわざわざ責任を問われるべきかといえばそうではないと思う。身代わりにされた印象が強い。誰の、とは言わんけど。

 

角を曲がると涙

序盤に語られる「パフォーマンスに満足したら自然と涙が出る」、「いつか来ますかね、そんな日が」。それがとうとう来たのが、来てしまったのがアリーナツアー2019FINALの「角を曲がる」。曲の世界観を完璧に表現していて、拍手拍手の素晴らしいソロパフォーマンス。多分この時点で脱退(≒卒業)を決意したのだと思う。満身創痍であることを一切感じさせない、大トリに相応しいまさに文句なしの、これにもう1枚チケット代払えるね、というパフォーマンス。

余談にはなるがこの後に続く紅白2019のメンバーとのお別れシーンは切なかった。特に印象的だったのは田村保乃の表情で、状況を飲み込めてなさそうな、理解したくないようなそんな表情だった。直前まで楽しく過ごしていただろうに、まさかこんなことになるなんて想像もしていなかっただろう。かなり切ない場面だった。最近の言動を見てると強くなったなと思ってちょっと感動してしまう。

 

欅坂46のSeed & Flower

ここからは映画を通して感じた運営等への愚痴パート。

さっと読み流してもらって大丈夫です。

楽観的すぎない?

2017アリーナツアーの平手友梨奈の欠席。流石に当日急にという問題ではなさそうだし、それこそ劇中の2019アリーナツアーで行ったようにいないときのパターンを想定しておくべきだったのではと思わざるを得ない。当日になれば流石に戻ってくるとたかをくくっていたのかもしれない。というかそもそも直近のロッキンで「勝ちに行ったのに納得のいくパフォーマンスができなかった」から休むって何でしょうね。

これが例えば画家が「あの絵は納得いかなかったので次回作は取り止めてしばらく放浪する」とかであれば納得はできる。それはそれで困る人も出るだろうが、画家は個人事業主であり、個人のパフォーマンスが生計に直結するからだ。

翻って平手友梨奈はあくまでアイドルグループのセンターである。いわば集団の中心であるべき人が勝手な行動を取ってメンバーから不満が出ない保証はない。果たして本当の本当に色々あったグループで組織は機能していただろうか。運営もさすがに素人ではないと信じたいし、各メンバーに対するマネジメント並びに指導を丁寧に行っていたと思いたい。が、そう信じるのも難しい。それ程までにSeed & Flower (以下種花とする)という組織に対する不信感は根強い。オタクに媚びろとは言わないが、きちんと向き合う必要はあったのではと思う。

 

 

無神経すぎない?

種花の無神経さここに極まれりの場面が9thシングル表題曲選抜メンバーのところである。選抜メンバーの発表が終わったあと、何も言葉をかける間も無く、非選抜となったメンバーへ退出を命じる姿はこいつらマジでヤバい奴らだとネガティブな衝撃が大きすぎた。

そもそも選抜メンバーの方を動かした方が良い場面である。非選抜だからと言ってグループが別れる訳でもないのに、さもオーディションの不合格メンバーは出て行けとばかりに追い払うのは無神経の極みすぎた。

そして9thシングルの発売延期発表の際の種花、というよりは今野氏だが、あの場で解散というワードを出す必要もなければ、叱咤するような言葉選びをするべきではなかったのでは。何よりショックを受けているのはメンバーだし、日和ったのは種花なのでそちらを叱咤して欲しいものである。尾関梨香と田村保乃の今野氏へ向ける表情を忘れない。

無神経シーンは日向坂のドキュメンタリーにも出て来る。ひらがなけやき時代を振り返るパートで、ライブ前の漢字欅のメンバーがダンスの練習をしている場面、ひらがなけやきのメンバーが手持ち無沙汰で佇んでいるシーンがあった。それはええんかと、確かにその曲には出てこないかもしれないが、あれが正しいマネジメントとはとてもじゃないが思えなかった。ただただ廊下に立たされているような、半分懲罰なのかなと思ってしまった。そういう些細なところからもやっぱり種花ダメなんじゃねえかという確信が深まってしまった二重に悲しいシーンであった。

不可解すぎない?

恐らく誰に聞いたところで納得する回答が出てこない場面もある。

6thシングル「ガラスを割れ!」のMV撮影のパート。これが撮影されたのは2018年1月28日とのことだ。一方でひらがなけやき(現日向坂46)の武道館3daysは同年1月30日から2月1日である。

元々武道館3daysは漢字欅の舞台であったのがセンター平手友梨奈の怪我の状態が思わしくないという理由により、ひらがなへ振替えられたものだ。メンバーの怪我のために振替えられたのである。

一体どういうことなのだろう。てんで見当もつかない。怪我があるから武道館をひらがなけやきに振替えたのに、一方で武道館2日前に当のセンターを起用してMV撮影を行うという果たしてこれはどういうことなのか。メンバーの怪我はどうでもよくなったのだろうか。意味が分からない。無神経だし不可解が過ぎるしこんなものなら素人がやった方がまだマシだ

 

 

日和ったんですか??

幻になってしまった9thシングル「10月のプールに飛び込んだ」のMV撮影。突発的な台風発生により1回目の撮影が飛んだのはまだ許容できなくはない。

メンバーへの敬意を欠いているのは2度目の撮影で平手友梨奈の欠席が確定している中でそれを伝えず(メンバーも察してはいただろうが)、おまけに平手抜きでは価値がないと言わんばかりの発売延期。

種花の無能さが極まったシーンとしても名高いこの場面。17年のアリーナツアー当時であればそういう判断もありかもしれない。劇中に出てくるように平手友梨奈ありきの欅坂46だったことは否定できない。でも2019年は、あの時のメンバーはそうじゃなかったでしょう。劇中で確認できるだけでも1期生も2期生も全員がこのグループのために何ができるかを模索し、実行し、全員でアリーナツアーを作り上げたのではなかったの?

平手友梨奈がいるに越したことはない、それは間違いない。でも平手友梨奈がいようがいまいが懸命に努力したメンバーがいて2019アリーナツアーは成功したんじゃないの?一番側で見ていながら何も感じ取らなかったのだろうか。2度目の撮影はアリーナツアーが終わった秋のことである。感じ取る気も無かったとすればすごぶる残念ではある。残念ではあるがそういう運営である。全員で欅坂46であるならば、今いるメンバーで勝負して欲しかった。アルバムに収録された9thになるはずであった「10月のプールに飛び込んだ」を聞いていると余計に強く思ってしまうのだ。

欅坂46にとっての不運は彼女らのパフォーマンス、坂道グループとしては恵まれた楽曲に値する運営グループを与えられなかったことだ。このことだけは強く留めておきたい。

ちょっと脇道に逸れるが、個人的に9thを出して欲しかったのはカップリングを含めた楽曲が良いだけではなく、ようやく2期生が陽の目を浴びるチャンスであったからだ。なにしろリリースされていればようやく初めて楽曲への参加を果たし、そして初めての個人PVが作られていたはずだったのだから。

結局改名により彼女らの欅坂46としての痕跡はディスコグラフィー上にはほぼほぼ残らなかった。一方で彼女らの同期に当たる乃木坂4期生は同期曲がすでに4曲あるし、何より4曲目として製作された「I see...」はYouTubeで1千万回再生を突破した。そして4期生のみでテレビで楽曲披露をするまでに至っている。正直これがめちゃくちゃ悔しい。*3

(もちろん当事者ではないのだけど)欅坂2期生のポテンシャルを信じている者としてはグループによってこれだけの(というにはあまりにも大きな)一般への露出差があっていいものかと感じる。もちろんライブ経験を通して培った表現力は同期でも随一だ。それでも彼女らの楽曲が未だに無いという事実(さらに櫻坂の1stシングルでも実現は絶望的)には非常に辛いものがある。激流に飲み込まれていたグループの中でグループの色を、世界観を壊さまいともがき続けていた彼女たちはどうか櫻坂では報われてほしい。ただただそれだけである。

 

終わりに

 のんびり書いていたら欅坂のラストライブは無事終わり、グループがあっという間に生まれ変わって行った。最近の動きからはようやく運営がまともさを手にしつつあるという印象である。まだまだ不信感は拭えていないけど。

オタク個人の思いとしては新グループではメンバーがとにかく平穏に過ごせる日々が続くように願いたい。呼吸も苦しくなるような激流に飲み込まれる経験は一度でいいはずなのだから。 

 

 

*1:本文中敬称略

*2:公開時期からしばらく経ってはいますが、本文中には映画ネタバレを含みますので、ご覧いただく際はご注意くださいませ

*3:ちなみに日向坂3期生の上村ひなのにはなんとソロ曲がある。